小説

らき☆ぽけ





第4話「山賊アジト潜入大作戦!!」


見事ユリシからコスモバッジをゲットしたかがみ。

どんな経緯があったにしろやはりかがみでもこういうものは嬉しいものだ。

そんなかがみのバッジをこなたが少し羨ましそうに見つめる。

「いいなぁかがみん・・・。」

羨望のため息をつくこなた。

ここに来てからというもののポケモンゲットといいジム戦といいポケモンワールドにおける重要事項を全部かがみに先を越されているのだ。

別にそれくらいでかがみに対して敵対心を持ち噛みつくこなたではないが、流石に悔しいという思いはこなたにもあるようで、多少機嫌とかも悪かったりする。


「さて・・・どこに行くか・・・?」

途中の道で分かれ道に差し掛かった二人・・・。

特に目的地があるわけではないので別にどちらへ進むにしても問題はないのだが・・・

分かれ道というのは別に当たり外れがなくても迷ってしまうものだ。

「こなた、あんたはどっちに行きたい?」

「ん〜・・・そうだね・・・んじゃあ”左”!」

そう言いながらこなたは勢いよく左の道を指さす。

もちろん特に理由などない。

ただこなた曰く左の道が己の進みべきと誰かが言っているらしい。

こなたのアレゲな発言にかがみはいつものため息をつくが、特に左の道を否定する理由もなかったのでそのままこなたの意見通り左へ行くことにした。

左の道をしばらく進むと徐々に森のようなものが見えてきた。

「うわ深そうな森ね・・・。」

「これは旅ではありがちな迷子フラグが立ちそうな・・・」

こなたが少し不安そうに言う。

「勘弁してほしいわね?っていうかその台詞がもうフラグとやらを立てていないか?」

「まぁそかもね!」

不安を匂わせる言葉を言うこなた達だが、至って余裕のようだ。


「あ、小屋だ。」

そんな中こなたたちは森の手前で一軒の小さな小屋を見つけた。

休憩がてらそこに入るとそこには複数の2段ベットが並べられていた。

そして、老婆が一人・・・。

「あの〜すいません。ここでちょっと休ませてもらえませんか?」

ベットの数からみてもここは簡易宿泊ロッジのようだ。

早速休ませてもらおうと老婆に声を掛ける。

「あんたらこの先の森を抜けるのかい?」

老婆はかがみの話を見事にスルーすると一人でにおどろおどろしい感じに自己演出を始めながら語り出した。

「この先は残虐非情な山族が出てな?この前だって私の目の前で一人攫われよった。」

老婆のあまりの話のスルーっぷりにこなたはOKと踏んで家の中に上がり勝手に椅子に腰かける。

「山族イベントかぁ・・・。」

「女の子ばかり攫うなんて・・・どこの・・・!!」

そこまで言いかけた時、かがみは慌てて口を紡ぐ。

その恥ずかしそうに口を塞ぐかがみを見てこなたはピーンと来てしまった。

「まさかかがみん・・・どこのエロゲとかいいそうになったりした?」

「いや・・・・残念ながらそれはないわ。」

とは言うが先にかがみの頭に浮かんだのはこなたの言う通りそういう類のものだった。

まぁかがみが何を言いたかったのはさておき、老婆は奥の台所へ行き、温かいコーンスープをこなたとかがみに差し出した。

こなたとかがみは一つ頭を下げると、それを口に含んだ。

「お主ら・・・」

しばらく黙っていた老婆が口を開いた。

二人もスープから目線を老婆に移した。

「もし、山族の頭に会うことがあったらこれを渡してはもらえんか?」

そう言うと老婆は棚の引き出しからモンスターボールを模った首飾りをこなたに渡した。

「これは?」

こなたはそれを受け取りマジマジと見るが特に変わった様子はなく普通の首飾りのようだ。

「・・・山族たちの忘れ物じゃよ。」

自然と目線を逸らす老婆にこなたはそれ以上の言葉は言わずただOKの言葉だけを伝えた。

「うん!分かったよ〜。」



その内こなた達は一息つくと老婆から少しの食料を分けてもらい、森の中へと出発した。

「・・・野生のポケモンとか出てきそうな雰囲気ね?」

「そだね?」

森の中は陽の光が差し込み思ったより明るかった。

周りを見渡すとキャタピーやケムッソなど森の中でよく見られるポケモンたちが見られた。

「それにしても・・・あのお婆さんを疑う訳じゃないけど・・・あんな安請け合いしちゃってよかったの?」

かがみは先ほどのこなたと老婆のやりとりが不安で仕方なかった。

わざわざ旅人に危険といわれる山族に会うかどうかも分からないのに忘れ物を届けさせるなんてかがみには嫌な予感しかさせない展開だ。

というか危険と言い出したのはあの老婆だし・・・下手したら自分たちだって狙われることだって否めない。

「まぁ貰ったと思っておけばいいじゃない?」

「あんたねぇ・・・」

それはそれで問題だろ?と思いつつ二人はドンドン森の奥へとに入っていく。

「・・・ねぇ?あれどう思う?」

「どうって・・・」

森を抜ける二人の前に現れたのは地面の上に置かれたバスケットに山のように盛られたきのみ・・・。

しかしポケモンたちは全然寄ってこない。

明らか罠だ。

「例の山賊かな?」

「なんかこの罠を見る限りじゃあ危険って感じじゃないわね?」

「確かに・・・。」

二人はきのみを横目に罠地点の横を素通りしようとした・・・その時だった!!

急に二人の足元がガクッと沈んだ。

「へ?」

「うぉ!」

そして、二人の姿は一瞬にして地上から消えた。

「いったーい。」

「お、落とし穴とは・・・」

落とし穴に落ち、服についた泥とかをはたき落としてると続いて真上から網が降り、二人はあっという間に網に吊るされ御用となった。

「ぐははははは!」

「ぐへへへへへ!!」

間抜けにも捕まってしまった2人を更に間抜けそうな二人組の声が聞こえてきた。

小太りで細めの男とヒョロっとした少し顔の青い男・・・。

二人は網に捕らわれた二人を見ながらひたすら笑っていた。

というか喜んでいる様にも見える。

「ちょっと!なんてことすんのよ?あんた達が山賊ね!?」

かがみの言葉を無視すると男たちは木に結わえていた網をほどくとその両の端をしっかりと結び、二人ががかりでこなた達が入った網を担ぎ歩き出した。

「何処に連れて行こうっての!!」

何者かもわからない男たちの向かう先にかがみは不安を重ねていく。

一方のこなたは冷静なのか呑気なのかやれやれといった具合で頭をポリポリと掻く

「これがエロゲとかだったら私たちは2度とお嫁に行けないみたいな展開になる!!」

あっけからんというこなたにかがみの顔はぞっと青ざめた。

そして、ただならぬ妄想がかがみの頭にグルグルと駆け廻った。

「じょ、冗談じゃないわよ!!なんとか脱出しないと!!」

「お?かがみん顔が真っ赤だよ?やっぱり普段ああいうのをやったことも見たことも触れたこともない人が一度そういう妄想に入るとなんか反応が初々しくていいね?」


ニンマリとするこなたを本気で拳制裁を加えようとした瞬間だった。

不意に男たちの足が止まった。

どうやらアジトについたようだ。

「よし、中に入れよう!全くこの3日で13人目だ・・・。」

「全く・・・気が遠くなる話だぜ・・・。」

男たちがアジトの岩の扉を開けようと一度網を下ろした時だった。

それを機に今まで余裕綽綽だったこなたが動いた。

「じゃ、アジトの場所も分かったことだし・・・いけカモネギ!!」

こなたはカモネギを網の外に出した。

その瞬間かがみにもこなたの狙いが分かったのか少し腰を浮かせ準備をする。

「”いあいぎり”!!」

「カモー!!」

カモネギのネギ捌きが見事にこなたとかがみを傷つけることなく網だけを微塵に切り裂いた。

そして、同時に男たちがその事態に気付く。

「あ、あのガキども逃げ出したぞ!!」

「何!?オヤカタに怒られる!!」

一目散に逃げ出すこなたとかがみ。

それを追う男たち・・・

普通の追いかけっこなら断然こなたの方が早いのだがかがみのペースに合わせていたため少しずつ距離を詰められる。

「やばい・・・早いな。」

「こなた!あんたもう少し早く走れるんだから先に逃げなさいよ!!」

「えぇそれやるとかがみんに死亡フラグ立てちゃうからな・・・それは私的には勘弁願いたいから・・・」

すると、こなたは少し考えると不意に立ち止まりかがみを驚かせた。

「だったら確実に撒いてみせるよ?カモネギ”こうそくいどう”!!」

そう言うとカモネギはかがみを両手に抱え走り出した。


そして、カモネギが何とか運んでるのを確認すると今度は男たちの方へ向く。

そのこなたの行動に少し警戒したかのように男二人は立ち止まった。

すると舌を指で左目の下の皮を伸ばしながら舌を出した。

まぁいわゆるあかんべ〜だろう。

それをやるとこなたは全力で走りだした。

「あんのガキー!!」

怒り心頭の男はすごい迫力で追いかけてくるが全力疾走のこなたに追いつくはずもなく・・・・

あっという間にこなたを見失って。


そして、こなたはかがみを抱えながら走るのにバテテきたカモネギに追いついた。

「ちょっとこなた。カモネギへばってるわよ?っていうかこんなことしなくても私は普通に走れたわよ!」

少し恥ずかしそうにかがみは少し無理やりにカモネギから降りた。

「乙〜カモネギ!」

そういうと疲れ切ったカモネギをボールに戻した。

「でも、カモネギに走らしたほうがかがみが普通に走るより早かったよ?」

「まぁそりゃそうだろうけど・・・まぁとりあえずお礼を言うわ。ありがとう!あんたとカモネギのお陰で助かったわ!」

「うんにゃ礼には及ばんよ?それより少ししたら戻るよ?」

「は!?」

いきなり何かを言い出すのかとかがみは驚いた。

しかし、こなたは至って真面目に言っている。

「じゃあ、聞くけどかがみん?あいつら今月で13人目って言ってたでしょ?というこは私たちを除いて11にんのいたいけな少女たちがあの場所に囚われているんだよ?」

「・・・あ。」

こなたがいわんとしてることがかがみには分かった。

そして、その後に続く言葉に勿論かがみは返す言葉を持ち合わせてはいない。

「・・・そうね。ここでその人たち見捨てると結局は私たちも悪者同然よね?」

「そいうこと!かがみなら分かってくれるとと思ってたよ?」

「ま、これでも弁護士志望だからね?悪とは積極的に立ち向かわないと!」

照れくさそうに少し空の方を見上げながら言うかがみ。

そんなこんなでこなたとかがみの潜入作戦が始まった。



「あ、戻って来た!!」

森の茂みの中に身を潜めていたこなたとかがみは偵察に行っていたムックルを出迎えた。

ムックルは体を目一杯使ってこなたたちに現状を報告しようとする。

そして、どうにかこうにかそれはこなた達に通じた。

「ふむ入口に見張りはなし・・・代わりに二人がかりで開けないと開かない岩の扉か・・・。」

「岩の扉ならチコリータの”はっぱカッター”とクチートの”れいとうパンチ”で壊せそうだね?」

「そうね・・・」

しかし、肝心のことが分かっていなかった。

囚われている人の場所・・・敵の数・・・それぞれの位置関係も出来れば把握しておきたいが・・・

空からの偵察ではどれも分からないことばかりだ。

こなたとかがみは頭を悩ませる。



そんな中、アジトの内部では・・・

「大丈夫ですか?」

「あぁ・・・大丈夫だ。ありがとよつかさ。」

「ううん・・・何か私の方こそごめんなさい!!」

大柄で白いひげを顎にたくわえた男が汗だくで藁の布団の上で寝そべっていた。

その汗を一生懸命拭き、看護するのは頭にリボンがトレードマークの少女・つかさだった。

「お前はよい子だのう・・・。つかさ?」

大きな手で男はつかさの頭を撫でてやる。

「つかささん!ご飯です!!」

「あ、ありがとうございます!」

あらくれ風の男がつかさに昼食と言ってマズそうなカレーを差しだした。

「ごめんなさい。私が作らないといけないのに・・・。」

つかさが申し訳なさそうに男からカレーを受け取る。

そして、それを看病していると思われる男の横で静かに食べ始めた。

すると、入口から二人の男が戻って来た。

男は床に伏せる男の前で正座をすると頭を下げた。

「すいやせん、オヤカタ!!さっきそこで女二人とっ捕まえたんですが・・・ちとドジって逃げられちまいやした!!」

「まさか網を切られるとは思わなくて・・・」

「・・・そうか。」

男はそれを聞くとドッと肩を落とした。

「・・・早急に見つけてやれ・・・。俺の名を落とすようなことすんじゃねえぞ!!!」

床に伏せながら自身をオヤカタと名乗った男は身も竦むような大声で子分たちに喝を入れる。

その一声に、子分たちは声を若干裏返させながら、元気よく返事をした。

その様子につかさまで体を緊張させてしまう。



そんな時、入口でガラガラと何かが壊れる音がした。

「て、てーへんです!!女が二人、入口の岩戸を破壊して・・・!!」

入口に付近にいたと思われるものが、慌ててボスであるオヤカタに報告を入れる。

騒然となるアジト内・・・。

すると、入口から大きな声が聞こえ、山賊達を驚かせる。

「たのもー!!」

その声にまず反応したのはつかさだったが、すぐに二人の男に避難のためと奥へと連れて行かれた。

入口にいたのは二人・・・。

見事に入口から道場破りかのごとくこなたとかがみの二人はアジト潜入をやってのけたのだ。

「さぁ・・・チコリータ?このまま一気にやっつけちゃって!!」

「人のポケモンに勝手に命令をしないでくれるか?」

もうノリノリのこなたと不安いっぱいのかがみ。

山賊の数は目算でも10人はいなかった。

「よし、私も・・・ヒコザル!!」

こなたはヒコザルを出すと、準備バッチシとばかりにかがみに意味不に親指を立てた。

かがみには恐らくそれがなんとなく「グッドラック」という意味で見られたようでこなたに「あんたもね」と口頭で答えると、吹っ切れたかのように先に先陣へと飛び込んだ。

「チコ、”はっぱカッター”!!」

チコリータの攻撃が山賊達を襲う。

「いけっ!!ゴルバット!!」

「オニドリル!!」

「マスキッパ!!」

山賊達も応戦しようとそれぞれのポケモンを繰り出す。

その数にかがみは少し怯むが、こなただけは余裕綽綽といった感じに敵陣へと無謀にも突っ込んでいく!!

「ヒコザル、”かえんぐるま”!!」

ヒコザルが炎を体に纏い突っ込み、こなた達に道を作る!!

「くっ!行かせるか!!ゴルバット、”ちょうおんぱ”!!」

「キッ!?」

ゴルバットの超音波により急に右往左往してしまうヒコザル。

無差別に”かえんぐるま”で山賊達に突っ込んでいくヒコザル。

「あらら・・・混乱状態だね?」

こなたはあわててヒコザルをボールに戻す。


こなたがこれからどうやってこの戦陣を切り抜けるかを模索していると後ろから突如馬鹿でかい声が響いた。

それはまるで魔獣の雄叫びにも似たような身を震わせるような声だった。

それはかがみたちだけでなく、山賊達も身を震え上がらせていた。

そして、それはゆっくりとやって来た。

「なんや?やけに騒々しいのぅ?」

「オ、オヤカタ!!」

「オヤカタ?」

こなた達の前に現れたオヤカタは体長が2Mはあろうかというほどの巨身で、推定年齢50代といった感じの白ひげをふんだんに蓄えた中々の貫録ある男だった。

その威圧感ある姿に気圧されているかがみとは打って変わってこなたの目はキラキラしている。

「うわー!なんかようやくの強敵って感じがするじゃん?多分私たちがLv38くらいにならないと勝てる相手じゃないよ?」

ここがポケモンワールドという設定を完璧に忘れているこなた。

いや・・・覚えていたとしても、今のこなたの最強の敵はこのオヤカタなのだろう。

「あんたはまたしょーもないこと・・・ん?」

呆れて突っ込みを入れようとしたかがみがふとオヤカタの方に目をやり、一瞬口を紡いだ。

「ねぇ?凄い汗じゃない?」

かがみはおびただしい汗の量に目を丸くした。

「オヤカタ・・・糖尿?」

「な・・・!?」

こなたの緊張感ない間抜けな一言に山賊一同は今まで翻していた体を更に翻す。

案の定目を丸くするオヤカタ。

完全にオヤカタの怒りを買ったと思ったのか、山賊たちは無駄に口を塞ぐ。

しかし、山賊達の不安をよそにオヤカタは低い声で大笑いしだした。

「グハハハハ!!なぜ分かった!?小娘?」

山賊達はまさかの反応に今度は口が開きっ放しだ。

(オヤカタ・・・糖尿だったんだ。)

初めて知らされるその事実に山賊は驚きを隠せない様子だ。

「あんた凄いじゃない?なんで分かったの?」

「いや・・・ゴメン。ギャグで言ったつもりだったらなんか大ウケしちゃった。」

「あ・・・そ。」

まぁそんなことだろうと分かってはいたが、それでもこなたの勘の鋭さはかがみも認めざるをえない。



「ハァハァ・・・もてなすぞ客人?何が望みだ?」

オヤカタは辛そうに立ちながら、こなた達を招き入れる意の言葉を言った。

その言葉にかがみ、山賊共々安心しきったのかそれぞれのポケモンをモンスターボールにしまう。

そして、こなたは案外ホイホイと話を本題へと進めていった。

「・・・女か?」

「そ、女!!」

こなたが事情を話すとオヤカタは少し考えるように下を向く。

そして、ゆっくりと口を開く。

「・・・ここに女は一人しかおらんよ?」

「は?」

意外な答えに驚くこなたと猛反論するかがみ!!

「ちょっと待ちなさいよ!!あんたの子分が確かに言ったのよ?”この3日で13人目”って!!」

「・・・あぁ確かにお前達を除く11人の女は確かに来たよ?」

かがみの反論を静かに聞き入れると、オヤカタもまた静かにその言葉の返事を返した。

そんなオヤカタのトーンの低さに若干怒鳴り気味だったかがみも声を少し萎めた。

「・・・それって女の人はもうここにはいないってこと?」

「あぁすぐ返した。俺達の探している女じゃなかったからな?」

「どんな女の人捜してるの?もしかして初恋の人とか?」

女を探しているというワードにこなたが食いついた。

オヤカタに食いついたこなたをとりあえず引き剥がすかがみ。

「ちょっと、こなた!!そこまでは聞き入りすぎだろ?自重しなさい!!」

「釣れないなぁかがみんは〜。」

少し残念そうな顔を見せるこなたを見てオヤカタは再び笑いだした。

「グハハハハ!!面白い嬢ちゃんだな?名前はなんていうんじゃ?」

「私は、泉こなた!!こなたでいいよ?こっちはツンデレのかがみん!!」

こなたは自分とかがみの自己紹介を始める。

当然かがみはその紹介には不満の様でこなたに軽く黙らせると改めて自身の紹介を始めた。

「柊かがみです!!・・・ってなに?」

かがみの紹介が終わるや否やオヤカタを始めとする山賊達が目を丸くした。

その様子に思わず口を抑えるかがみ。

「よく・・・」

「・・・?」

かがみの元に自分たちを網で捕らえた二人組の男が歩み寄って来た。

そのただならぬ様子にかがみは身を退ける。

「よく戻ってきてくれた!!」

そう言うと二人組はかがみに一斉に抱きついた。

「きゃっ!!」

柄にもなくオドオドと顔を赤くしながらパニくるかがみ。

そんなかがみを助けるようにこなたが男二人を無理やり引き剥がした。

「ちょっと!!ウチのかがみんを触りたいんならちょっとマネージャー通してよね!?」

こなたが小さな体と両腕を目一杯伸ばし、かがみをガードする。

「ちょ・・・いつから私があんたのモノになったのよ?」

かがみの顔面噴火は止まらない・・・。

「お前らだったか・・・。」

「はい!彼女の描いた絵によく見たらそっくりでした!!ほぼ間違いないかと・・・!!本人にも確認を取りましたし!!」

「・・・そうか。」

オヤカタが嬉しそうでいてどこか寂しそうな表情を浮かべながらそう呟いた。

さっきまでうるさかったこなたもその様子に自然と静かになる。

「おい!!出てきていいぞ!!」

オヤカタが一言そう言うと、オヤカタの後ろの部屋から少しビクビクしたようにさっきまで避難部屋にいたつかさが顔を出した。

「な?つかさ!?」

「おぉ!!つかさ!!」

「やっぱり〜!お姉ちゃん!こなちゃん!!」

互いの顔を見合わせ嬉しそうに駆け寄る3人。

「やっぱりつかもこの世界に来てたんだね?」

「うん!!二人ともここに来ていてよかったよ〜私一人じゃ絶対に帰れないもん!!」

「とにかく無事でよかったわよ?」

互いの無事を確認し、喜ぶ3人。

つかさに限っては目に涙を浮かべている。

それにつられかがみも少しウルッと来てしまったが、そこは姉としてか必死にこらえた。

そんな3人の嬉しそうな姿を見たオヤカタは満足げに笑みを浮かべた。

「つかさ、よかったのぅ?」

「シロちゃん・・・。」

「シロちゃん?」

あまりに外見と合わないつかさがオヤカタに付けた愛称は一瞬こなたとかがみを困惑させた。

どうやら、白ひげからきた愛称らしい・・・。

本人も結構この愛称を気にはいってるようなのでかがみはそれ以上の突っ込みはしないことにした。



再開の喜びををひとしきり味わった後、こなたたちはようやくオヤカタに礼の言葉を言った。

「・・・これで、ワシがおらんでも大丈夫そうじゃな?」

「う、うん・・・今までお世話様でした・・・!!」

つかさが妙に改まった感じで目一杯に頭を下げた。

そんなつかさにオヤカタは目を合わそうとしない。

柄にも似合わず結構センチメンタルな面があるようだ。

それを誤魔化すようにオヤカタは無理に笑って見せた。

「グフフフ・・・はよいけ!ほれ荷物じゃ!!」

そういうとオヤカタはつかさの背の大きさにピッタリのリュックをつかさの前においた。

中はオヤカタが用意していた旅の道具が一式詰まっていた。

そして、そのほかにモンスターボールが1個・・・。

「これは?」

「ワシからの選別じゃ・・・ワシのポケモンがこの前生んだ卵から孵ったばかりじゃて・・・大事にしておくれよ?」

「うん・・・ありがとう!!」

つかさは嬉しそうにリュックを背負うと、後ろを向き少し照れくさそうにオヤカタにそのリュックを背負う自分の姿を見せた。

まるで小学校入学前に祖父からランドセルを買ってもらった子供のようだ。

そんな光景にかがみは微笑ましく思い、こなたはまた別の意味でつかさに微笑んでいた。

「・・・じゃ、行くね?体・・・私がいなくて大丈夫?」

つかさが心配の一言をオヤカタにかけてやると、その後ろの子分たちが、耳の鼓膜が破れるといった感じの大声を出した。

条件反射で一斉に耳を塞ぐつかさとかがみ達。

しかし、そんなのお構いなしに子分たちは先ほどとあまり変わらない音量でつかさにエールを送ってやった。

「大丈夫ですよ!!つかさ姐さん!!」

「この優秀な我々に任せてくだせぇ!!」

「姐さん、お達者で!!」

中には涙を流す者もおり、つかさのこの山賊団での位置関係が明確に現れていた。

そんなつかさの慕われっぷりに唖然とするかがみ。

そんなつかさはまんざらでもないようだ・・・。

「つかさもえらく若いうちに出世したね・・・。」

「そうね・・・。」

こういうところを見ると自分の妹の行く末が不安になってしまうのかかがみは疲れたように落胆のため息を吐いた。

「なんかクラスのお別れ会って感じだね?」

「そうね・・・そう言った意味じゃここの人たちって結構子供染みてるかもね?」

苦笑いを浮かべるかがみ。

その横で残念そうなため息をつくこなた。

「ん?どうした?」

「いや・・・オヤカタの体調がよかったらぜひとも手合わせ願いたかったなぁって・・・。」

「なぁ?それはポケモンでって言う意味だよな?」



「お姉ちゃん、おまたせ〜!!」

「ちゃんと挨拶してきた?」

しばらくして、アジトからつかさが出てきた。

その瞳は少し潤みを帯びている・・・。

「うん、いこ!!」

涙を拭うとつかさは愛らしい笑顔を二人に向けた。

「よし!行くか!!オヤカタさん、ありがとうございました。つかさが世話になったみたいで・・・。」

「気にせんでええ・・・こちらこそ悪かったなぁ・・・うちのガキ共が手荒な真似して・・・」

まぁその分、こなたたちも派手に暴れまわったのだが・・・。

それはもうお互いに言いっこなしだろう。

そして、ゆっくりと、山賊のアジトを離れていくこなたたち・・・。




「お気をつけてー!!!!!」


「ひゃぅ!?」

騒音といわれても文句が言えないほどの馬鹿でかい声がこなた達の50メートル後ろから聞こえた。

身を怯ませるかがみとつかさ。

そして、つかさも叫ぶ。

「みんなも元気でね!!」

目一杯彼らに叫んだが、恐らく声は届いてないだろう。

そんなことお構いなしにつかさは「バイバーイ」とひたすら手を振る。

後ろの山賊達に手を振りながら前へと進むつかさは・・・



「ひゃ!」



・・・やっぱり転んでしまった。




あとがき


どもぽちゃです。

ようやくつかさです。

つかさは人見知りのイメージが強いのですが、一度馴染んでしまえば否が応でもつかさワールドが広がってると思ったので、別に山賊でも問題ないかなと思う今日この頃です。

というかもう少し、ポケモンの事を意識しないとだめですね。

以後気をつけます。

つかさはかなりお気に入りのキャラなんでこれからどうやって動かして行こうか凄く楽しみです!!

じゃ、また!!